英語の聞き流し、ながら聴き。無意識インプットはどれだけ効果があるのだろうか?

”聴くだけでペラペラになる秘密をお教えします─”的な教材。

ひと昔前によく広告を目にしました。いやだいぶ昔から結構ありました。朗読CDの教材。

果たして意味があるのか?ないのか?

今回は

・英語の聞き流し

・ながら聞き

について。

朝起きて英語ニュース。通勤時にはスマホでオーディオブック。昼休みポッドキャスト。寝るときにも米ドラマDVD・・・

せっかくのスキマ時間だし。やらないよりはマシ。

どうでしょう?


(2022年11月)

その後のこの記事で、学習定着効果という意味でインプットとアウトプットの差を考えてみました。

1. 耳は空いてるし・・・

「家にいて何か手元作業をしながらせっかくだから」

「通勤通学時間でスマホ見てるよりましだから」

せっかく耳が空いてるなら、時間を使って何かできないか考えてリスニングの時間に当てている方は多いでしょう。

この「ながら聞き」は想像以上に身につかず非効率な方法だと思っています。それでも

隙間隙間では集中できるはず

もともとは耳は空いている

通勤時間以外は時間がとれないし

など、無意味を主張するものでもありません。それならどのような素材が効率的なのか、など筆者の考えを述べたいと思います。

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2. 聞き流すと言語ではなくなる

「聞き流し」とは

”音は聞こえていても内容は気にかけない”

ことだそうです。言語として聞く意思がない。

人が一生懸命話しかけているのに聞いてない状態がそうですね。全く話が入って来ていない。

あるいは、夜寝るときに英語を流して寝る態度も「聞き流し」ですね。これもほとんど音としてしか聞いていない、入眠導入剤です。

言語でなくても音楽も聞き流せますね。でも、明るい音楽がいい、湿った音楽がいい。真剣に聴いてはいないですがその雰囲気が必要なとき。BGMのことですね。

人間にとっては音声・音階・音圧・リズム は認識しているが言語としては脳が処理していない状態ですね。

ということでいずれにしても、母国語でさえ「聞き流す」と意味がわからないのですから、そもそも知らない外国語を「聞き流し」して何かが湧いて発生するわけがありません。

意味のわからないCNNを一日中流していても英語音声を音楽的に聴いているだけで、何か言語的なものが生まれるわけではありません。

それでも”音”としては脳は認識しているので、音声的に言語特有の音素やリズム、音感に「慣れる」ことはできるかもしれません。

音と言語を繋げるのは脳の回路。その言語処理回路(神経細胞)は意識的な訓練によってこそ作られるようです。

言語処理回路を通らなければ、あるいは日本語処理回路を通ってしまえば、外国語音声は動物の鳴き声と同じです。

ちなみに、世間で言う「聞き流し教材」は単に言い間違えで「ながら聞き教材」が正しい表現だと思います。

3. ながら聞きとは

「ながら聞き」については「ラジオのながら聴き」という表現からも

”何か作業をしつつところどころ音声内容を気にかけてる態度”

ですね。聞く意思はある、音声は聞き取れていて言語として認識する意図もある。ただ重心はどっちつかずのマルチタスク脳状態。

逆に「ながら作業」と表現する時は作業に重心があるのでラジオは聞き流しに近くなりますね。

英語ラジオであれば、英語音声がもともと聞き取れない人は内容を気にかける以前の問題で「ながら聞き」はできません。

また英語音声が聞き取れていても、それが英語回路ではなく、日本語言語処理回路に流れてしまえばやはり内容は理解できません。

わかりづらい表現になりますが、そういうことになります。

「ながら聞き」は相当に高度な言語処理能力をもってして可能となる能力であり、外国語学習者では難しい、ということです。

4. ながら聞き用の素材

”難しい”と言ったばかりの作業をしながらの外国語「ながら聞き」ですが、やるとしてどんな素材を通勤時に用いるかーー

まずは一度学習した素材を考えます。すでにおおよそ音声は聞き取れていますし内容も理解しています。

通勤時はその復習に充てようという算段です。

集中できるタイミングは散発的になりますが、復習は心理的にもしんどく本来はやらないことが多い。「ながら聞き」はむしろちょうどいいと。

その際の注意点をいくつか。

復習する素材は、直近のものにしないようにします。いわゆる短期記憶が生きている素材は使いません。

一週間か二週間かそれ以上前のものを利用します。

それは短期記憶が残っていると電車内で、”聞き取れてる”、”理解できてる”、と感じているものが、本当に実力かどうかが怪しいからです。

筆者は学習直後の復習はあまり意味がないのではないかと考えています。学習して長期的に身についたのか、短期記憶に過ぎないのかがわからないのです。

確かなことは、その瞬間はだいぶ聞き取れるようになった気がして気分がいいということです。

加えて、素材は既に視聴しているので内容鮮度もなく脳は飽きています。

自然と集中することなく意識が向かずにほとんど「聞き流し」になりがちです。

5. ながら聞きの大きな障害点

そして1番の問題点。質問です

英語をながら聞き”している時、もう一方の作業は何語で思考していますか?

だいたいは日本語に決まってますよね。ですが日本語で思考をしながら英語を聞いてるとすれば

”その時間は英語を英語のまま理解できてる可能性はほぼゼロ”

だと思います。一般的に脳の日本語処理回路と英語処理回路の同時稼働はできないと考えるべきなのです。

詳細は別の機会に触れたいと思いますが、英語の「ながら聞き」はこのように日本語脳と英語脳を切替えながら思考するという、超難易度の高い作業なのです。

その意味で「ながら聞き」は初心者であればあるほど効率が悪い(ほぼ無意味)のです。

以上から、話は転んで

「ながら聞き」の効果はレベルによる

という結論になります。上級者ほどこの回路の切替えを意識的に上手にできます。バイリンガルは生まれながらの2回路持ちですから無意識にできるようです。

6. 割り切って聞き流す

では初級者・中級者は「ながら聞き」は諦めれば良いのでしょか?ひとつ提案があります。

”むしろ「聞き流しですが何か?」と開き直る”

のです。以下のようにーー

1)少なくとも半分以上は聞き取れるリスニング素材を用意します

2) それを「ながら聞き」します

3)その際、意味や文脈理解にはこだわりません(「きき耳を立てて聞き流す」)

4)音楽のように何十回でも繰り返します

5)どうしても、聞き取れない音が炙りでます

6)字幕で確認します

英語の思考力が未熟なので、そこ(文章理解)は捨てます。その代わりに単語音に集中します。

文章としては入ってこなくても、単語や文節の塊くらいは入ってくるでしょう。

英語の音素、コロケーション、リズムを体得しようという試みです。

その後全単語が判明したら、ゆっくりと文章理解の時間を設けます。

英語脳がないので英語はほとんど喋れないのに発音だけはやたら褒められるようになるかもしれません(筆者の実話)。

7. やってはいけない

「聞き流し」「ながら聞き」に限らず、どのような学習素材でもそうですが、字幕のない(答えあわせのできない)素材は使いません。

聞き取れない部分を教えてくれる人がいないので、わからないまま放置になってしまいます。

効率が悪いですし雑な学習になってしまうのが心配です。やるなら丁寧にやりましょう。

[記事] まずはネイティブ4歳の英語力が目標。日常英語のリスニングにこだわる

最後に余談ですがーー

「聞き流し」ながら就寝する行為は、脳の英語回路に対して何か意味があるかもしれません。

直前まで見ていた映像が夢見に影響するようにーー

筆者の場合は、ドラマDVDを見ながらそれをやると寝入りがとても悪く(寝しなで目が覚めてしまう)好きではないのであまりやりませんが、その後に英語の夢をみることがあります。

外部参考リンク・図書
初心者でも安心!日本人講師のオンライン英会話「ワールドトーク」
ここで『英会話に行くリスニング力が』ついたら行く英会話

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