フルハウス。古いけどリスニング入門編としてはやっぱりおすすめ

第1話パイロット版のオンエアは1987年。

それから34年。それでも今なお、入門用リスニングの教材として

フルハウス(原題:Full House)』

は価値が残っていると思っています。

今回は─

” 多くの皆さんがお薦めしているフルハウスはなぜ筆者もお奨めなのか “

です。

一方の『フレンズ』は前回紹介しましたがあまりおすすめしていません。

1. 疑似ホームステイ

『フルハウス』は1990年代前半には、日本のNHK教育でも放送されたほどの作品です。

そして現在もなお、比較的容易に視聴が可能です。

日本語版DVDは安価に発売されていますし、ネットフリックスでも視聴できます。

共に英語字幕が表示可能です。

amazonのプライムビデオにもラインナップされていますが、吹き替え版のようです。

ネイティブ先生のいない独学においては、英語字幕はなくてはいけません。

”リスニングの答え合わせ” として必須です。


さて本題の

”リスニングの取っ掛かり題材としてフルハウスが適していると考える理由─”

ひとつ目

[1]. 主人公たち6人(途中のシーズンより7人)のうち3人が子供であること

です。

シットコムの舞台はほとんどの場合は家の中。

見ている側は、生まれて間もない幼児と小学生、中学生の三人の子供がいる家庭に

”疑似ホームステイ”

してるような感じに少しなれます。

それで気づくいろいろなこと─

「4歳の子供って普段そういう単語を使って喋るんだ。」とか、

「7歳になるとそこまで複雑な文法の言い回しをするんだ。」とか、

「子供同士の言い合いって、英語でもそういう感じなんだ。」

とか。

それは義務教育の授業では全く教わらなかった、自然な子どもたちの日常会話。

そんな擬似機会を得ることができます。

自分の部屋にいながら。

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2. あたり前の会話が聞ける

登場人物のセリフを聞いていると─

・子供たちに対し大人たちが語りかける優しく丁寧で常識的な言葉─

・それに対して子供たちが投げ返す子供らしい常識的な言葉─

ふたつ目はこの

[2]. 常識的な会話や言葉のやりとり

で、これこそ『フルハウス』を貴重な教材にならしめている部分だと思っています。

実際シットコムに限らずテレビドラマ、映画においてこのような

”あたりまえな会話”

はあまりくことはありません。なぜなら─

多くのドラマや映画であれば、

・直ちに場面展開してしまう

・ボケて笑いにしてしまう

・ひねった返しをする

・皮肉で返す

などになるでしょう。だって─

あたりまえの日常的・常識的な会話なんておもしろくないですから。

その点このドラマはたびたび

”ハートウォーミングな”

という形容詞で装飾され、日本では教育テレビで放送されたほどなので

・比較的ゆったりとした演出

・カット変わりの少ない編集

・極端な笑いに振らない脚本

・下品さが皆無のセリフ

など子供の視聴に耐えうるファミリー向けな仕上がりになっています。

私たち大人も子供達を見ていると元気をもらえますし、見ていて嫌な気分になることもありません。

3. キャラクターも当たり前な人たち

3つ目としては多くのシットコムがそうであるように

[3]. キャラクター設定が一般人

であること。

子供たちは特殊能力の持ち主ではありません。

大人たちもスーパーマンでもなければ大金ちでもありません。

マフィアでもありませんし、博士や科学者でもありません。

ですからセリフに含まれる単語が、極度に専門的であったり、特殊であったり、難解であったりすることはありません。

また複雑な言い回しや、私たちが見るにあたって事前に必要とされる知識等もありません。

難しい単語が出てきてその都度調べなければならない、ということもあまりありません。

ということなので、仮に聞き取れなくてもそれは、

「難しい単語ではない。」

「聞いたことがない単語でもない。」

とあらかじめ決め打ちできます。

だいたいは。

けっこう予測範囲は絞れますね、ということは。

「でも聞き取れたけど、いまいちピンとこない─」

なんてこはあるかもしれません。

こんな場合もしかするとそれは

”イディオム(句動詞)”

かもしれませんね。

ですけどがこれは、むしろ願ったりではないですかね。

「映像と一緒にイディオムを覚えられるチャンス」

だと。

[関連記事] 日常英語で使われるイディオム習得で効率的なキクジュクの使いかた

4. そして普通の日々

4つ目にその上で

[4]. 舞台設定も日常生活

を挙げておきます。

何か非現実なことに挑戦するわけではありません。

信じられないような偶然や奇跡がおこるわけでもありません。

脚本のロジックが破綻して、見ているこちらの頭の中に

「?」

が浮かぶこともあまりありません(ギャグパートは除いて)。

・おおよそ予想通りに物語は進行し─

・その中で話の展開があり─

・少しの意外性があり─

・あるあるがあり─

・笑いがあり─(ここは難解)

といったバランスです。

母親がいない設定なので、母娘的な会話が少ないのが学習者の立場としては残念ですが、

それでも当初はDJがその役割を果たし、中盤からはレベッカも加わり、お母さん的な会話も聞くことができるようになります。

エピソードプロットに関しては

・大人サイドが中心の話

・子供たちが中心の話

・笑い要素の多い話、少ない話

等で、リスニング的には難しかったり易しかったりがもちろんります。

このあたりは目的によって、これは” 多聴用エピソード “。こっちは” 精聴用エピソード “

などとペースを変えて使い分けるのがいいのでしょう。

5. それでもシットコム。笑いの部分は難しい

笑いはいつでも外国学習者にとっては難関です。

掛け合い、食い気味、早口、おまけに母音省略発音。

仮に聞き取れても(気がしても)、その上で意味がわからない…

なんてことは、笑いパートではしょうっちゅう。

例えば

仮に聞き取れたし、意味もわかった気がする。

「でも、それで何が面白いの?」

「なぜ、舞台裏からの笑い声が聞こえるの?」

「え、やっぱ何か聞き違いした?」

「ああ、ローカルギャグか・・・」

などなど。

笑いの難しさ、シットコムの難しさについては別の記事で話しました。

[関連記事] フレンズで英語リスニングの学習をするとき、少し考えておくべきこと


会話内容や使われる単語や文法についてはこの

”日常生活という舞台設定”

のおかげで取り掛かりやすいのですが、こと”発音”となると難しい状況がたびたび現れます。

フルハウスのキャラクター設定ではジェシーとジョーイが漫才コンビのような役割になっています。

そのためこのふたりを中心とした掛け合いは特に難しいです。

まあ、今となっては時代的に古いギャグも多用されていますが、そこは飛ばします。

なので最初は音が取れれば御の字。

そして冗談を言い合うシーンは難しくてあたりまえ。

「ああそうですか」で次の場面に行く。

割り切ります。

6. 登場人物別の喋りの印象

それぞれのキャラクターの喋りについて印象を少し。

ダニーやジョーイは普段の会話は明瞭丁寧でかなり聞き取りやすい喋りです。

ダニーはテンパるとめちゃくちゃオタク的な早口になりますが、発音は教科書的なまま速くなるので、これはこれで勉強になるかも。

ジョーイはスタンドアップコメディアンですから、日常でも意味不明なボケがあり─

そこは放置。

DJは二人に比べれば少し早口。

また初期シーズンでは子供らしい発声が残ります。

子供発音学習素材としては貴重かもしれません。

ミッシェルは─

シーズン4あたりで急におしゃべりを始める印象。

母国語って閾値みたいなものがあって、ある年齢になって、そこを超えるといきなりネイティブ、って感じで突然ペラペラ喋り始めますよね。

日本語も同じ。

レベッカは途中からですが、彼女も日本人から見てとても綺麗な英語に聞こえます。

キャラクター的に時々早口、ときどき小ボケ、なので所々で話が見えなくなりますけど。

ということで、

DJ、ダニー、ジョーイ、ミッシェル、レベッカ。

全体として丁寧で聞き取りやすい英語です。

問題は─

ジェシーとステファニー。

この2人。

フルハウスのリスニングでは難関。

「ジェシー何言ってるか聞き取れない・・・」

大丈夫。

みんなそうだから。

7. 聞き取りが難しいジェシーとステファニー

ハード聞き取りな2人について見ていきまます。

まずジェシーに関しては、

”典型的な、いわゆる省力(タメ口)発音”

です。

普段から口をあまり開けないで喋る傾向があり、冗談をいうセリフになると、これに速度が加わり難易度はさらに上がります。

自分はこれを、オーラや表情を含めて

”イケメンしゃべり(発音)”

と呼んでいます。というのも、

・『スーパーナチュラル』のディーン

・『ロスト』のソーヤー

たちが同じ喋り方をするのです。

ご存知のとおりみんな見事なイケメンです。ちょいワルな。

なぜかイケメンの人たちは共通してこの喋りをするんです(2度目)。

そして最後に理解できないギャグをボソッと飛ばしてフフッと自嘲する。

「なにがおもろいねん!」

いずれも大変聞き取りづらい。

ですが彼(ら)の発音を学ぶことは”ドラマの聞き取り学習”という観点からはもとても重要。

イケメンが主人公なパターン多いですからね。ドラマも映画も。

避けては通れない。


そして次の難関─

ステファニー。

彼女のセリフも聴き取り難易度高いです。

まあ、おそらく普通に子供的な未完成的な発音なんだと思います。舌ったらずで。

口はきちんと開けて喋るのですが、発音が成長途中なのでしょう。

またおしゃべり(チャターボックス)な設定のため基本早口。

加えて場合によってはセリフも長め。

そのため最初から聞き取れない、途中から置いていかれる。

あるいは聞き耳を立てて繰りかえし聞いても、何言ってるかわからないことが多いです。

そもそも単語の区切りすらわからない。

ステファニーはシーズンが進むにつれ、成長によってこの舌ったらずな喋りこそなくなるのですが…

頭の切れる子設定なので、とにかく早口で冗談も好きという少女に。

で、けっきょくリスニングの難易度はトータル変わりませんね。

ずっと難しい。

ちなみにこのステファニー役のジョディ・スウィーティンさんですが、

最近この作品のリユニオン・ドラマ

『フラーハウス』

が制作されたこともあり頻繁にメディアに登場しユーチューブ等でも見れます。

そのしゃべりはドラマからは想像できない、とても明瞭でわかりやすいものでした。

8. 子供のしゃべりのリスニング

最後に

この子供発音のリスニングについてですが、

これって日本語の子供達のしゃべりも同じですよね。

音だけを追っても聞き取れない。

「え?」

ってなる。

「難しいことを言うわけではない」

みたいな前提で、前後の文脈から内容を想像していますよね。

結局は英語でもそういうことになる。

そういう場面こそ実は自分の英語の実力が(普段のアウトプットが)試される場面です。

「完全には聞き取れてないけど、だいたい何が言いたいかは分かる─」

というのは、けっこうな実力です。

総合リスニングスコア [10]点

  • 発音:★★☆☆

(明瞭〜不明瞭):全体的に声量もあり明瞭★★。ジェシー、ステフファニーが場合によっては★★★★

  • 速度:★★★☆☆

(ゆっくり〜やや早い):掛け合い、パンチラインなどは★★★★。頻度は多くない

  • 訛り:★☆☆☆☆

(ほぼない):訛りは感じません

  • 内容:★★★☆☆

(容易〜難しい):語彙・ロジックともにやさし目ですが、時代的に古め。笑いは難しいです★★★★

(以上、2021年2月)

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