フレンズは難しい?シットコムで笑える英語力とはどの程度なのか
英語を勉強してる人で知らない人はいない─
『フレンズ(原題:Friends)』
のリスニングレビューです。
初めて米ドラマにチャレンジを考えている方には…
おすすめしにくい作品だと思っています。
それは”シットコム”だからなのですが、どうしてなのか考えたいと思います。
(追記、2023年10月30日)
チャンドラー役のマシュー・ペリーさんが亡くなったとの報道がありました。
最近でもYoutubeでたびたび見かけることがありましたが、心配な感じでした。
残念です。
自分は英語のリスニング学習を『フレンズ』で始めました。
難しく挑戦的な内容の中で、
それでも彼のチャンドラーとジョーイの掛け合いは面白くて何回も見た。
腹を抱えて笑えるシーンのほとんどがチャンドラー絡みだった印象です。
まあ─
『フレンズ』はたぶん死ぬまで、時々思い出しては見続けるのだろうと思ってます。
現世はちょっとしんどかったね。お疲れさまでした!
(追記、2023年8月)
フレンズは現在もhulu(フールー)で視聴可能です。
英語/日本語字幕の表示ができます。もちろん日本語吹き替え音声あり。
(以下、2021年1月のオリジナル記事)
1)なぜフレンズだったのか
最初に結論を。
もしTOIECで700点前後、英検2級程度くらいの英語力だとします。
だとすると─
『フレンズ』は難し過ぎます。
[関連記事] フルハウスがリスニングにおすすめな理由とジェシーとステファニー
シットコムは笑うためのものです。
そして笑いを理解するためには
・相当の語学力
・その国に関する知識
・人生経験
などが必要と言うことは納得できると思います。
小学生が漫才やコメディを楽しむ姿はなかなか想像できない。
リアクション芸なら分かるけど。
英語力が未熟な外国人学習者も同じ。
その”意味の分からない笑い”を理解しようとすると、
リスニング学習の本筋ではない部分に時間を割いてしまう可能性が高い。
とりわけシットコムは、基本的な英語表現を学ぼうとするには、あまり向いていないと思われます。
特に初中級者は学校で習わなかったような、日常会話表現をストックしていきたい。
ですがフレンズを含むシットコムはこの点で難しいのです。
基本コントですから。
非常識(想定外な)な会話が多いのです。
まずは常識的な会話を覚えたい、という希望はあまり叶いません。
・配信でフレンズを英語字幕で見るならフレンズが多くの場合に英語学習おすすめタイトルに上がっている理由は、単に─
”2000年代初期において、リスニングの学習教材が映画を除くと極めて少なかった”
からです。
字幕付きのドラマ、字幕付きのシットコムDVDはあまり選択肢ありませんでした。
アメリカのドラマが次々にDVD化されたのは2000年代も終盤になってからです。
その中でフレンズとフルハウスはアメリカでの人気も高いため早々にDVD化され、
面白く楽しんで見れてなおかつ容易に手に入れられる教材、
として英語学習者にとって双璧だったのです。
2)笑いを理解できるということ
コンテンツ内容が面白ければ長く続けられることは確かです。
ですがその面白さを理解するために、人によってリスニング以外の時間が増えてしまう傾向があるのです。
例えば─
”アメリカ文化に根ざした笑いのシーン”
フレンズに限らずすべての映画、ドラマやバラエティでも同様ですが、
その場面が理解できなかった時。
どうしますか?
スクリプトや字幕を改めて参照して意味を探ろうとしませんか?
そして、
”人名や映画ドラマのタイトル検索”
”引用セリフそのものの検索”
”それら背景の理解”
などしませんか?
この間はリスニングの時間ではありませんし、日本語で調べていたらリーディングの時間ですらありません。
この時間は、
”日本語で考えて日本語で納得している時間”
です。
次に例えば─
”シットコムならでは、漫才さながらの掛け合い、あるいはコント仕立てのセリフで笑わせるシーン”
はどうでしょうか?
笑うとはどういうことなのか?
それは会話のやり取りの中で突然として常識外、想定外のセリフ─
いわゆる”ボケ”を、自分の常識と比較してその常識とボケのギャップを認識すること。
その予想外なセリフに人は”なぜか”笑う。
自分たちは普段の会話で、自分の経験と照らし合わせ相手のセリフを半ば予測しながら聞いている。
3)それは調べ物をしている時間
だとすると、学習者の私たちは英語でフレンズを見ながらそれができるだろうか?
つまりこの大爆笑のシーン、皮肉な「フフフ」笑いのシーンが
”もし漫才ではなかったら”
“もしコントではなかったら”
”もし皮肉ではなかったら”
どのようなセリフが常識人の返しなのかイメージを持っているでしょうか?
そしてさらに事を難しくしていること。
それはこのような掛け合い言い合いになると、演者のセリフ回しは一気に早口(省略発音/友達発音)になりがちなこと。
まあこれは英語に限らず、日本語の漫才でも一緒。
小学校の頃漫才聞き取れました?
で以下の工程を辿ります。
1)早口不明瞭でよく聞き取れない
2)聞き取れたとしても、非常識な会話のためそれが正しく聞き取れたかどうかの不安が残像として残る
3)正しく聞き取れたとして今度はそれでも全体として意味が分からない
4)笑い声が聞こえるが、何が面白いのか分からない
5)会話はどんどん先にいく
6)会話から脱落
7)DVDを止める
8)改めて日本語吹き替えを聞く
9)意味が理解でない
10)字幕をじっくり読み直してみる
11)わからない
12)単語に別の意味があるかもしれない、と調べ始める
。。。
リスニングをやっているはずが、ほとんど耳を使わない、日本語で考えている時間だけ過ぎていきます。
不安・疑心暗鬼という意味では、シットコムでは観客とみなされる笑い声が足されているためこれも手強いでしょう。
例えばきちんと聞き取れていて、自分では笑いと取らずに笑えず流したシーン。
「なのになぜか笑い声が聞こえてくる…」
ここで一瞬、自分の聞き違いを疑い自信が揺らぎ脳が停止しします。
そして次のセリフの聞き取りに影響する。
あるある。
4)笑いの部分は軽く流す
こうして考えると
”アメリカ文化に根ざした部分や掛け合い漫才、ダジャレに関しては深追いしすぎない”
という戦略を取らざるを得なくなる。
でもこれだとおいしい身の部分がほとんど無くなる・・・
というかシットコムである必要は全然ない。
また今や配信の時代なので、無理にフレンズである必要もありません。
流石に画質含めて古く感じますし。
ちなみに発音のことだけを言えば、主要キャスト6人とも
・丁寧発音な標準アメリカ英語
・舞台セリフの如く聞き取りやすい発声
・むしろ不自然なほどの声の張り方
で内容理解は別として相当聞き取り易いレベルです。
舞台劇さながらの大声量かつ明瞭。
まあそれでもTOEICやNHKラジオ、一般教材で聞ける外国人向け発音と比較すれば、レベル違いのナチュラル発音ですけど。
主要キャストの中ではモニカ(コートニー・コックスさん)の発音が普段から早口気味で難しいでしょう。
でもそれはさらに難易度の高い友達発音(省略発音)の学習への足がかりともなるでしょう。
それから笑いの場面が全て難しいということでもなく、
・ひと言ふた言で笑わせる、
・あるいは単純にリアクションで笑わせる、
といったシーンも多いです。チャンドラーとジョーイのリアクション芸大会ですね。
また全体の物語を進行・展開させるために、笑いの少ないシーンやエピソードも散りばめてあります。
フレンズが”面白い”のは完全に同意しますが、最初はあまり深追いをしないことだと思います。
■ フレンズの聞き取り難易度
(内容理解を含めた難易度ではありません。音声を聞き取るだけの難易度です。)
□ 明瞭度:☆★★☆☆
(明瞭〜普通):基本丁寧で明瞭。舞台さながら張った発声です。
□ 速度 :☆★★★☆
(ゆっくり〜早い):モニカは普段から早口気味。掛け合いになると各人早口になります。
□ 訛り :★☆☆☆☆
(ほぼない):極端な訛りは感じません。
(以上)