パグパグアドベンチャー。ローリーの舌っ足らずな子供英語が聞きどころ
今回のリスニングレビューはディズニージュニア作品から、大人気
『パグ・パグ・アドベンチャー(原題:Puppy Dog Pals)』
です。
可愛いパグ犬兄弟の日常を舞台とした半冒険物語で、私も結構面白いと思って見ていました。
この作品、英語リスニング素材として考えると、
” 羊的なタイトルの皮を被った実質犬 ”
的なチャレンジングな、とても聞き取り難易度の高い作品です。
子供のおしゃべり、日本語でも結構聞き取れないことありますね・・・
後半には登場人物の紹介とともに、特徴を紹介します。
(2023年8月追記)
本作品は、ディズニープラスでも視聴できます。
CC字幕が表示できることも確認できました。
なんか、面白いですよ。
1. 本国アメリカでも好評
作品は2匹のパグの子犬(兄弟)の日常物語。CGアニメーションですね。
飼い主ボブと暮らしている2匹。そしてボブが朝出勤して留守になってからが本当の1日の始まり。
そしてどこからともなく、誰ともなく問題が起きます。持ち込まれます。
それを解決するために2人は、時には仲間たちと、
近所だけでは物足りずに世界中を、果ては宇宙までところせまし駆け回り解決を目指します。
ま、だいたい空回りするんです。最初。
本国アメリカでは2017年からオンエアーが開始され、好評のため4シーズン目を迎えさらにシーズン5も予定されています。
筆者は2020年から2021年にかけてCS339のディズニーチャンネルでシーズン1とシーズン2の中から20エピソード程度録画視聴しました。
ちなみにシーズン4からは主人公声優の2人が声変わりで交代しているようです。
CS放送で交代した2人の声を聞いたことがなので、シーズン4は本稿執筆時点では日本未放送と思われます(2021年3月)。
ディズニージュニアの作品では10歳前後の実際の子供達が声優として配役されることが多いです。
そのため、ときどきこうして主人公の途中交代があります。
『ジェイクとネバーランドのかいぞくたち』
では主人公のジェイク役は4シーズンで3人が演じています。
CSでは字幕付きでパクパグアドベンチャーが見れます2. 英語をスピーカーで聞くことに慣れる
本題に入る前の寄り道で、音量的なことなのですが
この作品はMA(音声ミキシング)時のダイアログノーマライゼイションの設定なのか
セリフがやや小さく聞こえます。
なので相対的に背景音BGMが大きく聞こえるのです。
ちなみにさらに寄り道で−−
もしリスニングをする時に時に、いつもヘッドホンやイヤホンを使用しているなら
どこかのタイミングで、あるいは何かの素材では
スピーカーからの音声で聞くことに慣れることをすすめます。
思えば、私たちはヘッドホンからの音で日本語を学んでいないですしね。
スピーカーから学んだわけでもないですけど。
TOEIC対策にもなりますし。
番組フォーマット
番組は
11分から12分のセグメント(小エピソード)が2つ構成。
これはディズニージュニアでは標準のフォーマットですね。
セグメントに1曲程度、オリジナルの曲がはいるのもジュニアのフォーマット。
歌の歌詞はとても聞き取りが難しいですね。
登場メインキャラクターはパグ2匹のほかに
・2匹の飼い主のボブ(青年)
・ボブの作ったお手伝いロボット犬
・同居のメス猫1匹(お姉さん)
・隣人の飼い犬にキア(女の子)
・街に何匹かの知り合い犬たち
という感じです。
世界中を飛び回ったり、ロボットが出てきたりはありますが日常世界が舞台なので特殊な単語は出てきません。
『バンピリーナ』のような世界観とは異なりますね。あっちの作品も面白いです。
何かを追いかけたり、探し出す、というプロット(あらすじ)が多いです。
視聴しているとさすがに若干単調さを感じるかもしれません。まあ大人ですし。
でも逆に、
毎回状況が似てくる。つまり
毎回似たセリフがけっこう出てくる。
これはこれで学習向き、という風に前向きに捉えることもできる。
3. アメリカの子供の発音
聞き取りやすいボブの独り言から始まる朝のリビング・・・
なぜか毎朝、2匹に何かを頼んでからボブは出勤。
当然ボブのいなくなった家の中では・・・
のように始まるのがパターン。
状況の把握は比較的容易と思います。
2匹がこの後何をしようとするのかも予想しやすいので予測聞き取りの補助になるでしょう。
発音に関しては
ほぼ全てのキャラクターは白人アメリカ英語です。
一部のリカーリングキャラクターでアフリカ系アメリカ英語の発音が聞けます。
そして
” メインキャラクターの声優は子供たち ”
であることがこの作品の特徴です。
ディズニージュニアでは
『マペットベビー』や『ミッキーマウス』など
大人の声優陣が演じるタイプの作品と、この作品のように子供たちが声優の中心となるタイプの作品とがあります。
[記事] 幼児向け番組のマペットベビー。英語やりなおしの早い段階で取り組みたい理
そしてこの番組の(英語的な)特徴は何と言ってもビンゴ、ロリー、キア揃ってみな早口なことです。
・舌足らずで
・ハイトーンな子供キーで
・早口な
子供たちの容赦無い英語が聞ける貴重な素材だと思います。
・・・聞き取りはかなり苦労すると思います。
場面の状況を踏まえて前後予想しながら聞く。
このことなしで音だけを頼りに耳を傾けていても聞き取れない会話が続出するかもしれません。
4. ローリーのセリフ速度がわかる例文
それでは、本編から一つのセリフをピックアップして実際に見てみましょう。
第29話の後半セグメント
” 消えたぴょんぴょんボール ”
次のようなシーンがあります。
−−ボブが発明して家に持ち帰った試作品、
”子犬フェッチ用のぴょんぴょんボール”
家の中でフェッチして遊んでいましたが、ひょんなことから、家から飛び出て近所そこらじゅうを跳ね回っています。
ボブとビンゴ、ローリーたちはあわてて外に出て、ボールを追いかけ回しますがうまく捕まえられません。
ボブは会社に電話して
「子犬達はボールに大喜びで、テストは大成功と言えるけど、肝心のボールが行方不明で・・・」
と状況を説明します。
2匹も一緒に探し回りますが見つかりません。
諦めかけている弟ローリー(この嘆いてるセリフも分詞構文+第五文型かつ不明瞭発声かつ早い)に向かって兄ビンゴが
「頑張ってぴょんぴょんボールを探し出して、ボブのところに持って帰ろう!」
と励まします。そう言われて、ローリーは気を取り直して元気に次のように返します。
“We are going to fetch it so his work can make more of them for puppies all over the world to play with.”
改めてこのセリフを音読してみましょう。黙読でもいいです。
その時、スマホ等のタイマーを用意してください。
そして何秒で言えたかを計測してみます。
では
・・・
何秒くらいで言い終われましたか?
意味は取れましたか?
さすがにひと呼吸では言い切れないので、
“more of them”と”for puppies”の間に息継ぎが入ります。
・パグ・パグ・アドベンチャーをCC字幕で見るためには
5. ローリーのセリフ例文の解説
では例文を見ていきます。
筆者の” 聞き取り間違い&訂正編(脳内) ”版の解説になりますが・・・
このセリフの息継ぎまでの前半部分、ローリーの発音は次のように聞こえます。
ウィガナ-フェッチッ-トゥヒス-ワークン-メィキ-モォヴネン、
ローマ字的に無理くり表すなら・・・
wigana-fechi-tuhs-workn-meik-mo-rvnem,
という感じでしょうか?
“We are going to fetch it so his work can make more of them for puppies all over the world to play with.”
意味上の区切りは、
“fetch it”と”so his work”
の間にあるので普通であればそこでひと呼吸のリズムになると思います。
ここをローリーは連続して発音しています。
筆者はそのためこの部分”it so”が [ito] に繋がって聞こえました。結果ここを
“fetch it to his work”
と理解しました。
そして目的語の”his work”という表現が
「ボブの仕事」なのか「ボブの会社」なのか
一瞬迷いました。
そうしている間もなく、セリフはここで終わらず
間を空けずに”can make”と流れるリズムで聞こえ始めます。
想定外の品詞(can make)が聞こえてきて脳が止まります。
同時に自分の聞き間違いも疑います。
「聞き違えでなければ主語は何なのか?」
その後のセリフをすべて聞きとって、セリフが終わった後に
「ああ、主語は”his work”かな」
というイメージが浮かび上がります(日本語でもそうであるように)。
続けて意味が確定できなかった部分
「”his work”は会社のこと、あるいは会社の人たちのことかな」
と振り返り判断をしました。そして
「ああ、そういう意味か」
と。ただその間にビンゴはもう次を喋り始めてましたが・・・
6. 動詞さえ聞き取れていれば
このセリフですが、
“We are going to fetch it so his work can make more of them for puppies all over the world to play with.”
動詞(fetchと can make)
は聞き取れていたので、セリフの続きを聞きながら文の主語が何であるかを上記のように逡巡する余裕が多少ありました。
結果として聞き終わってから脳内で文を振り返って、正しい文に復元(作成)できました。
それでも”fetch it”のあと、”his work”の手前の
一瞬の単語(soですね)
は何を聞き違い(聞き逃し)したのかは不明のままで会話は続きます。
初見ではこの”so“を”to“と聞き違えただけなのですが。
ここからわかることは
子供(に限りませんが)の発音は聞き取りが難しく音だけを頼りにしても聞き取れない。
なので全てを聞き取れる訳ではない。
という前提でリスニングする必要があるのかな、ということです。
日本語でも同じですね。
難しいことは言ってはいないはずなので、前後関係から想像しながら聞く。
総合的な英語力が試されますね。
ちなみにローリーですが
筆者が視聴したディズニージュニア作品中の主人公キャラクターの中では今の所、トップレベルの聞き取り難易度だと思っています。
番外編としては、ドナルドダックの聞き取りが超難関です。あれはわからない。
最後に今回引用したセリフの発音速度です。
ローリーは上記セリフを
5秒フラット
で言い終わります。
息継ぎまでの前半は2秒半。
5秒で上のセリフを言おうとしたら、音をつなげるしか手段はないですよね。
7. 個別キャラクター、リスニングレビュー
以下、主要キャラクター別の話し方の特徴です。
・明瞭度(滑舌や声量)
・しゃべりの早さ
・訛り
の3点を中心にレビューします。参考のために声優の出身地を(判明していれば)併記しています。
キャラクターの中で未成人声優はビンゴ、ローリーとキアで共に10才から12才前後。
・ビンゴ(Bingo) (voiced by Issac Ryan Brown)
双子兄弟パグの兄の方。濃いグレーの体毛色。
3匹(ビンゴ、ローリー、キア)の中では聞きやすい。
聞き取れないほど早口になることもあるがは、そこまでは多くない印象。
声変わりによりシーズン3までで交代。2005年生まれ、ミシガン州出身。
・ローリー(Rolly)(voiced by Sam Lavagnino)
双子兄弟パグの弟の方。薄茶の体毛色。彼の
・流れるような、
・ワンセンテンスを一つの長い単語のように単語間をつなぎ、
・引っかかる音素(t、th、rなど)はルーズに流す、
ような発音方法は、スペルからかけ離れていて我々日本人にとってはもっとも苦手と思われます。
加えて子供でありながら、演技としてより子供っぽさを出していると思われ難易度はさらに上がっています。
また時々、舌の脇から空気が漏れるような発声も聞かれます。
この発声は出身地(か両親)にも関係していると思われます。
彼も声変わりによりシーズン3までで交代。
2006年生まれ、ペンシルヴェニア州(アメリカ東北部)東部出身
・ボブ(Bob)(voiced by Harland Williams)
二匹と猫のヒシーとロボット犬アーフの飼い主。企業の開発系の部門で働く。
家に彼以外の人間はいないので、セリフの多くは子犬たちにに声を掛けるか、独り言(状況説明)になる。
ゆっくり丁寧なスペルどおりの発音で、鼻にかかった声だが聞き取りに影響はしない。
少しキーを上げた声作りをしているのはオタクっぽい雰囲気を出す演出か。
声優さんの本業はスタンドアップコメディのようで、それも比較的聞き取りやすい。
カナダトロント州生まれ。
・ヒシー(Hissy)(voiced by Jessica DiCicco)
2匹と同居している年上のメスの猫。
いわゆるアンニュイな雰囲気を出す演出なのか、普段は比較的ゆったりと話す。
けど2匹に振り回され始めると比較的簡単に感情を乱す。
声優はカルフォルニア州出身
・アーフ(A.R.F.) (voiced by Tom Kenny)
ボブが開発制作したお手伝いロボット犬。
ロボット的な演出のため、声に少しフランジャー的な効果音を載せている。
喋りはゆっくりなので問題ない。
声優はニューヨーク州出身。
・キア(Keia)(voiced by Shiloh Nelson)
隣に住む子犬。活発な女の子の発声で声質も魅力的。
テンションがいつも高くスペルから外れた早口、子供特有のキーの高さ、など難しさ満載。
役を離れた素の彼女の喋りもネットで見れますが、役とあまり変わらない印象。
声優は2009年生まれ。カルフォルニア州出身。兄とともにTikTokのクリエーターとしても有名。
(以上、2021年3月)
外部関連/参照リンク
・ディズニーチャンネル(スカパーCS339)(CC字幕表示可能)(2021年3月)
・ディズニープラス(パグ・パグ・アドベンチャー)(英語字幕なし)(2021年1月)
・パグ・パグ・アドベンチャー(ディズニー公式ページ)
・Puppy Dog Pals(Wikipedia)