なぜフレンズは難しい:シットコムで笑える英語力とはどの程度なのか

(DEEY─)英語を勉強してる人で知らない人はいない─
『フレンズ(原題:Friends)』
のリスニングレビューです。初めて米ドラマにチャレンジを考えている方には…
おすすめしにくい作品だと思っています。それは「シットコム」だからなのですが、どうしてなのか考えたいと思います。
(追記、2023年10月30日)チャンドラー役のマシュー・ペリーさんが亡くなったとの報道がありました。残念です。
最近でもYoutubeでたびたび見かけることがありましたが、心配な感じでした。
自分は英語のリスニング学習を『フレンズ』で始めました。難しく挑戦的な内容の中で、それでも彼のチャンドラーとジョーイの掛け合いは面白くて何回も見た。
腹を抱えて笑えるシーンのほとんどがチャンドラー絡みだった印象です。『フレンズ』はたぶん死ぬまで、時々思い出しては見続けるのだろうと思ってます。
現世はちょっとしんどかったね。お疲れさまでした!
(追記、2023年8月)フレンズは現在もフールーで視聴可能です。英語と日本語字幕の表示ができます。もちろん日本語吹き替え音声あり。
1)なぜフレンズで英語学習だったのか?
『フレンズ』は1994年9月に放送開始されたNBC制作のシットコム(シチュエーションコメディ)で、その爆発的な人気から2004年のシーズン10までシリーズが継続作製されました。
世界中で知らない人はいないとまで言われ、アメリカ版ウイキペディアでは
One of the most popular and highest-grossing television shows of all time.”
と表現されています。
日本でもアメリカ放送開始の翌年1995年からWOWOWで放送が開始され、2000年代に入ると地上波での放送も始まったようです(日本版ウィキより)。
個人的に『フレンズ』の存在を知ったのは、英語勉強を再開した2010年前後に、学習素材選びをしているときでした。
当時すでにDVDが広く普及していて、日本でも多くの洋画DVDが入手できましたが、海外ドラマのDVDは多くはありませんでした。
日本でDVD化するためには、日本語吹き替えを製作し、日本語字幕を作成する手間と予算が必要で、映画DVDは上映素材を流用して発売できてもドラマは限られたのです。
その中で『フレンズ』と『フルハウス』は日本でオンエアーされていたので、日本語吹き替えがすでに存在し、残る日本語字幕の製作コストだけでDVD化が可能でした。
ということで英語のフレンズが多くの場合に英語学習おすすめタイトルに上がっている理由は─
「海外ドラマで英語学習するためにはDVDが最適解で、タイトルはフレンズかフルハウス」
という状況だったからです。90年代に日本でも人気だった『ツインピークス』も『24』も『Xファイル』もDVD化されるのは先だったと記憶しています。
DVDを止めながら英語字幕付きで、しかも「あのフレンズが見れる」ということで迷うことのない選択肢だったのです。
2)シットコムを見て笑えるとは?
仮にもしTOIECで700点前後、英検2級程度くらいの英語力だとします。更なる英語力をつけるために何か海外ドラマはないだろうか─で、
『フレンズ』
は難し過ぎます。それはシットコムだからです。シットコムは基本笑うためのものです。そし笑いを理解できるには、
・相当の語学力
・その国に関する知識
・人生経験
などが必要と言うことは納得できると思います。小学生が漫才やコメディをすべて楽しむ姿はなかなか想像できない。リアクション芸をの除けば。
英語力が未熟な外国人学習者も同じで「なぜそのセリフが笑えるのか」を理解しようとすると、リスニング学習の本筋ではない部分に時間を割いてしまう可能性が高いのです。
とりわけシットコムは、基本的な英語表現を学ぼうとするにはあまり向いていないと思われます。
特に英語学習初中級者なら学校では習わなかった「日常の普通の会話表現」をストックしていきたい。
ですがフレンズを含むシットコムはこの点で難しいのです。基本コントですから。
人を笑わせるためには、非常識(想定外な)な会話をしなければいけない。つまり「まずは常識的な会話を覚えたい」という希望はあまり叶いません。
3)英語ではなく日本語で考えている時間
コンテンツ内容が面白ければ長く続けられることは確かです。笑いながら英語を勉強できるなら最高です。
ですがその面白さを理解するために、人によって「リスニング以外」の時間が増えてしまう傾向があるのです。
例えばアメリカ文化に根ざした笑いのシーン。現地の習慣あるあるなので外国人は理解できません。そのときどうしますか?
これは笑いのシーンに限らずで、スクリプトや字幕を改めて参照して意味を探ろうとしますよね。
でも単語や熟語がわからないのであれば辞書を調べて済む話なのですが、セリフがわからない、しかもアメリカ文化特有っぽいとなると、
・人名や映画ドラマのタイトル検索
・引用セリフそのものの検索
・それら背景の理解
などしませんか?そうなるとこの時間はリスニングの時間ではありませんし、もし日本語で調べていたらリーディングの時間ですらありません。この時間は、
「日本語で考えて日本語で納得している時間」
です。あるいはシットコムならではの「漫才さながらの掛け合い」あるいはコント仕立てのセリフで笑わせるシーンはどうでしょうか?
「笑うとはどういうことなのか?」を改めて考えてみると、
それは会話のやり取りの中で突然として常識外、想定外のセリフ─、いわゆる「ボケ」を自分の常識と比較して、その常識とボケのギャップを認識すること。
だと思います。その予想外なセリフ(ボケ)に人は「なぜか」笑う。
ということで自分たちは普段の会話で、自分の脳内経験データベースを照合しながら、リアルタイムで相手のセリフを予測しながら聞いているのです。
4)シットコムで英語勉強あるある
だとすると学習者の私たちは、英語でフレンズを見ながらそれができるだろうか?今のこの大爆笑のシーン、あるいは皮肉的な「フフフ」的な笑いのシーンが
・もし漫才ではなかったら
・もしコントではなかったら
・もし皮肉ではなかったら
どのようなセリフが常識人の返しなのかイメージを持っているでしょうか?
そしてさらに事を難しくしていることは、このような掛け合い、言い合いになると、演者のセリフ回しは一気に早口(省略発音/友達発音)になること。
まあこれは英語に限らず日本語の漫才でも一緒。リズム重視だったり演者は死ぬほど練習しているので、セリフの速度は上がる傾向です。
こうしたことから自分の経験的にも性格が真面目であるほど、以下の過程を辿ることになります。
1)早口不明瞭でよく聞き取れない
2)聞き取れたとしても、非常識な会話のためそれが正しく聞き取れたかどうかの不安が残像として残る
3)正しく聞き取れたとして今度はそれでも全体として意味が分からない
4)笑い声が聞こえるが、何が面白いのか分からない
5)会話はどんどん先にいく
6)会話から脱落
7)DVDを止める
8)改めて日本語吹き替えを聞く
9)意味が理解でない
10)字幕をじっくり読み直してみる
11)わからない
12)単語に別の意味があるかもしれない、と調べ始める …
リスニングをやっているはずが、ほとんど耳を使わない日本語で考えている時間だけ過ぎていきます。
不安や疑心暗鬼という意味では、シットコムでは観客とみなされる笑い声が足されているため、これも手強いでしょう。
例えばきちんと聞き取れていて、自分では笑いとは取らずに流したシーン。「なのになぜか笑い声が聞こえてくる…」ような状況。
ここでもやっぱり一瞬自分の聞き違いを疑い、自信が揺らぎ脳が停止しします。その間にシーンはどんどん進んで置いていかれる…あるある。
5)であれば笑いの部分は軽く流す戦略
こうして考えると「アメリカ文化に根ざした部分や掛け合い漫才、ダジャレに関しては深追いしすぎない」という戦略を取らざるを得なくなります。
でもこれだとおいしい身の部分がほとんど無くなる・・・というかシットコムである必要は全然ないわけで。
また今や配信の時代なので、無理にフレンズである必要もありません。流石に画質含めて古く感じますし。ちなみに発音のことだけを言えば、主要キャスト6人とも
・丁寧発音な標準アメリカ英語
・舞台セリフの如く聞き取りやすい発声
・むしろ不自然なほどの声の張り方
で内容理解は別として相当聞き取り易いレベルです。舞台劇さながらの大声量かつ明瞭。それでもTOEICやNHKラジオ、一般教材で聞ける外国人向け発音と比較すれば、レベル違いのナチュラル発音ですけど。
主要キャストの中ではモニカ(コートニー・コックスさん)の発音が普段から早口気味で難しいでしょう。
それから笑いの場面が全て難しいということでもなく「ひと言ふた言で笑わせる」「あるいは単純にリアクションで笑わせる」といったシーンも多いです。
チャンドラーとジョーイのリアクション芸大会ですね。
また全体の物語を進行・展開させるために、笑いの少ないシーンやエピソードも散りばめてあります。
フレンズが「面白い」のは完全に同意しますが、最初はあまり深追いをしないことだと思います。

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